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江上真織個展「Tide」レポート

gallery_Nで開かれている江上真織さんの個展を観てきたので簡単にレポートします。

Nさんの展示スペースは建物の一階にあり、道に面するガラス窓が全面に設けられているため、自然光がふんだんにはいり開放感がいっぱいです。

作品の形状、サイズは様々ですが、図像はどれも無数に折り重なるドレープ(襞)が描かれています。
襞の端が波を描き、重なる波がリズムを作り出しています。重なりは画面中央から奥へ奥へと、際限なく続いているようです。

 

奥の壁に掛けられた大き目の作品の前に立つと、無限の襞の重なりに吸い込まれてゆきそうに感じます。
画面の周辺へ行くにしたがって図像が薄く描かれているため、絵画の端が意識されず自然と周囲の空間に溶け込んでいます。
いつしか自分が襞の重なりに取り囲まれ、いつの間にか迷宮に迷い込んでしまったかのようです。

画面の前を離れ冷静になったのちも、作品の前で起きた出来事はもやがかかったようにしか思い出せません。
まるで白昼夢を見ていたかのような印象を受けます。

 

江上さんの作品のもう一つの特徴は、絵画表面にあります。
滑らかで硬質な表面は、その色調も相まってまるで磁器を見ているかのようです。

描かれた柔らかな布の重なりとかっちりした表面の組み合わせが、これまたなんとも不思議です。

光を反射した時の表面は、さらに違った表情を見せます。
柔らかな布の端が鋭利な刃物のように立ち上がり、淡い印象だった図像がくっきりした強さを垣間見せます。

ひらひらと頼りなさげな布の重なりが、光の当て方ひとつで鋭さや強さに転じる様をみると、この絵画は複雑なものを孕んでいるように思えて来ます。

 

今回の展示のハイライトは、ギャラリーの建物の裏にある和室(?)になるでしょう。
こちらは光があまり入らず、照明もランプ一つです。

やや薄暗い空間に、作品が浮かび上がっています。
上がアーチ状の細長い画面が五つ並び、それを囲むように円形の作品が、下方は台のように矩形の作品が配置されています。
まるで全体が一つの祭壇のように構成されたこの空間は、静かな雰囲気を湛えています。

しかし、この祭壇はいったい何を祀っているのでしょうか?
先ほどはつい祭壇と書いてしまいましたが、そもそもこれは祭壇なのでしょうか?
この謎はそれぞれの方が、実際にこの空間と向き合って考えていただければと思います。

この展示に限らずですが、江上さんの絵画は微妙な色合いや表面の質感など、実物を観なければわからない要素が多々あります。
その点も合わせて、是非とも実際に展示会場で作品を観ることをお勧めします。

 

ギャラリーの外に出ると、いつの間にか陽が傾いていました。

 

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◎展示情報

【展覧会名】
江上真織 個展 「Tide」

【開催日時】
2017.6.3 sat-6.18sun  13:00-20:00(水・木 休廊)
最終日は18時まで

【会場】
gallery_N  (名古屋市千種区鏡池通 3-5-1)

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海牛目(かいぎゅうもく) ただの美術愛好家  社畜と家畜の狭間にtwitterを回遊  展示周りも基本狭間のみ 作り手でもなくコレクターでもなく、自他ともに認める「観るだけの人」 体力の無さには自信あり
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