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緒方ふみ個展 「空の福笑い」 レポート

波止場で開かれている緒方ふみさんの個展に行ってきました。

会場は自転車屋さんの奥にあります。作業場を抜けると白い壁の空間はまぶしく感じます。

展示は、壁を用いたインスタレーションと絵画(?)作品。
左手から正面の壁にインスタレーションが展開されています。

いくつかの枠のようなものが壁にかかっています。
ひとつひとつは、まちまちの長さの合板を棒状にしてつなぎ合わせることで形作られています。
合板はグレーに塗られており、棒によって濃淡があるようですが、一かたまりの中では二色位にまとまっています。

床に置かれ壁にもたせ掛けられたものだけが、ギザギザとした漫画の吹き出しのような形ですが、多くのものは矩形に近い形をしており、絵画の木枠を連想させます。

しかし、こちらは色が塗られており、見ようによっては壁を地にしたドローイングのようでもあります。この場合木枠は支持体ではなく図そのものと言えるでしょう。

右手手前には、テーブルの上に置かれた円形の布の中に白い絵具が固まっています。
布の下には器が置かれているのでしょうか、布はクリップで器の縁に留められています。また、布のお盆(?)の縁には青やピンク色をした紙や布を丸めたものが棒の先につけられ立ち上がっています。

右手の壁の高いところに小さなウサギの絵が一点掛けられていました。
この絵は表面のキャンバスがくり抜かれ、木枠の裏に貼られたもう一枚のキャンバスにも図像が描かれています。表の図像と奥の図像はつながって「うさぎ」が描かれているのですが、太目に作られた木枠が間に割って入ってきます。
木枠に注意を向けると「うさぎ」は後退し、「うさぎ」を観ているときは木枠は無いものとして見ているようです。

展示は「絵画」の構造に関するものだと思いますが、特に木枠の存在に焦点を当てているようです。しかし、絵画において木枠はキャンバスという支持体をさらに支持するという、二重に「見えなく」されているものです。しかし、絵画の虚構を成り立たせるには布をピンと張りシワをつくらないという役割は重大です。

今回の展示では、木枠という通常の裏方を表舞台に上げています。
それは絵画という虚構の真実を暴くためでしょうか?
それとも、虚構の裏にはさらに虚構が隠されているのでしょうか?

現実社会でも真実は簡単に姿を現すものではないことを考えると、こちらも幾重もの虚構が張りめぐらされているようです。

波止場はハードボイルドに格好の舞台でもあります。

展示情報

【展覧会名】
空の福笑い / Sora no fukuwarai

【開催日時】
2017-03-01 〜 2017-03-10
12:00〜19:00
休館日:3月6日(月)

【会場】
波止場 / Hatoba
愛知県名古屋市中区新栄 2-2-19新栄グリーンハイツ101

 

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海牛目(かいぎゅうもく)  ただの美術愛好家  放し飼いと家畜の狭間にtwitterを回遊  展示周りも基本狭間のみ 作り手でもなくコレクターでもなく、自他ともに認める「観るだけの人」 体力の無さには自信あり
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