ギャラリー矢田パートナーシップ〈NEXT〉#5 「計画的反抗」のレポートです。
長瀬崇裕はだだっぴろい展示室3「全体」を使っての展示。
この展示は外観を描写しただけである程度の意図が分かってしまう(いわゆるネタバレ)になってしまうため、詳しくは書けません。
もちろんその展示の仕方を知っただけでは、作品を鑑賞したことには全くならないのですが、コンセプトがはっきりしている作品はそれがわかったというだけで観た気になってしまう危険性を抱えています。
やはり実際に作品に接して感じる個々人の感覚こそが「鑑賞」においては最も重要なように思います。
長瀬作品は、展示の仕方と同時に「鑑賞」の仕方についての問いかけも含まれているように感じました。
山口麻加作品は、やや小さめの部屋二室を用いての展示。
山口さんの作品はこれまで、エビスアートラボだったり県芸サテライトGでのimpact展などのグループ展や、波止場で継続的に観ていてある程度なじみがあるのですが、矢田の広い展示室でどんな展示を観せてくれるのかという期待は見事に裏切られました。
長瀬さんの展示もですが、山口さんの展示もなかなか反抗的ではあります。
山口作品ではこれまで、部屋の壁や床を巻き込むような展示方法もみせてきました。普段に比べれば格段に広い展示室でやるから、おそらくそうした展示のスタイルで来るだろうなとこちらは勝手に予想していましたが、その予想は見事に外れです。
作品は、表面に微妙な凹凸が設けられていたり色面や図像の微妙なずれが、版という手法の過程を意識させます。もちろんそれは「版」のそれぞれの過程に関わってくる要素が、表現においてどういった意味をもつのかという内省的な問いをはらんでいます。
山口の作品は、そうした思考や問いを観る人にも投げかけるために提示されているように感じます。
今回、意表を突かれた展示の仕方は、顔を近づけて子細に観察しないと気づかない操作が施された作品を、あえて十分に引きが取れる(縦長の部屋の長い壁は片側にしか作品が掛けられておらず、向かい側は何もかかっていません。最初はあれっというかんじでした)ように展示したかのようです。
それが自分には「反抗的」と感じられた理由でもあります。
今展は両者とも「空(から)っぽ」がキーワードになりそうです。
そこに何をみいだすかは、各人それぞれにゆだねられているようです。
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◎展示情報
【展覧会名】
ギャラリー矢田パートナーシップ〈NEXT〉#5 「計画的反抗」
【開催日時】
2017.5.3~5.14(sun)
10:00~19:00 (日曜は17時まで 月曜日休館)
【会場】
名古屋市民ギャラリー矢田 第3・5・6展示室