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「無能服 十月十日展」at「Gallery MUNO」 2020.6.1-2021.3.7

 

「無能服 十月十日展」at Gallery MUNO 2020.6.1-2021.3.7

 

【Introduction】ご紹介

 

先日、見学に行き制作者でありオーナーの恒川隆太さんにお話を伺ってきました。

 

「無能服 十月十日展」とは、

名古屋市中区大須にあるGallery「MUNO」にて、

開催期間を「40週間」である280日を「十月十日」と定めて

2020年6月1日から2021年3月7日まで月毎に発表していく制作プロジェクトです。

 

長期展示会では、

月毎に一着ずつテーマを定めた「無能服」をオリジナル作品として制作し「collection」として順次発表されていきます。

そのテーマに関連した複数の作品が同時期に制作されていきます。

 

2020年6月から12月までの月毎に7作品が展示されました。

2021年1月から3月までの月毎に残すところ3作品の展示が予定されています。

 

全10回の展示終了時には制作された「無能服」全10作品と関連作品のすべてが一堂に出揃うことになります。

 

「無能服」は制作チームであり、

恒川隆太,つづくまさき,MITOS,大津千寛の4人で構成されています。

 

 

 

【Report1】制作過程について

 

 

制作過程のおおまかな流れでは、

月毎のコレクションのテーマをMITOSがアート的な観点で着想していきます。

それを恒川隆太と都竹政貴に伝えて、3人で時間をかけてよくディスカッションしてアイデアを出しあうことからはじまっていきます。

具体的なアイデアを出しあい

「衣服の種類・色彩・素材」の方向性が定まっていくと3人全員でディレクションして作品へとつなげていきます。





その際、手持ちの生地の素材から作品へと押し広げていくので、自然な流れで選択されていくそうです。

リーダー制を採用しておらず

特化した技術を誰かが持っていても制作での分担や分業を明確にせず共同作業することがチームの大きな特色になります。

実際に幾らか年齢差はありますがお互いの立場を尊重しあい、

個人ではなくチームに身を委ねることで意見の出しやすい環境になるそうです。

 

 


服飾作家である、つづくまさきがテーマに沿った素材からカタチへと縫い裁ち仕立てます。

3人の共同作業によりデザインと縫製を終えた段階で「無能服」は最初にオリジナルとして完成します。

その際に、月毎の展示作品となり一度、写真に収められます。

また面白いことに月毎のテーマによってはデザイン方法そのものが異なってもいます。

 

 

 

 

【Report2】無能服が完成してからの制作について

 

 

「無能服」をオリジナルのアートピースとして再び捉えなすことで、

 

MITOSは画家として新たな作品を表現しています。

恒川隆太は制作過程のあいだ日々に想ったことを執筆して原稿用紙に綴っています。

 

大津千寛は記録を担当しています。

完成した「無能服」自体を8×10(エイトバイテン)カメラで写真撮影を行い、また制作風景を動画映像として撮影もしています。

 

このようなカタチで月毎に発表展示されるオリジナル作品として「無能服」が制作され、

さらにこれらの関連作品が循環するように制作されていきます。

 

 


「十月十日」後には、

「MUNO」というGallery空間を産道に置き換え、

「長期開催期間」にはらんだあらゆる物事を

「無能服」の制作者と鑑賞者をこえて、関わる人たちがつながっていくような気がします。

 

そのときに、どのような産声をあげるのか、どのような姿カタチで現れていくのかを、

きちんと体験して心境の変化を感じたいと想います。

 

 

 

 

【Report3】無能服のシステムについて

 

 

「無能服」自体をオリジナル作品として最初に制作していることが大きな特長です。

単に、一着に仕上げ終えるだけのプロダクトではなく、完成した作品そのものをモチーフとして新たな「アートピース」として起因として更新していくように捉えていきます。

 

その延長線上に生まれ付随してくる作品は

「文章」「絵画」「動画」「写真」という複数の媒体の作品となり、さまざまなカタチで出力し変換されていきます。

 


そのため、オリジナルである「無能服」とオリジナルから派生した作品のあいだには相互作用が循環するように生まれていきます。

これらの過程で附属した作品の含みや追従してくる付加が拡張されていくことで、

服自体と服以外の作品が「主/副」をこえて共鳴しあい補完され、それが多種多面な重層化につながっています。

 

その再配置の影響は

「無能服」が本来持っている強度を本質としてさらに高めてオリジナルだけにとどまらない魅力を上手に引き出しています。

つまり、モチーフから「無能服」が生まれていくのではなく、

すべて「無能服」を通じて新しい発想や作品が次々に生まれていることになります。

 

 

 

【Impressions】

 

たとえば、

8色のマッキーを視線で追いかけた時に、視覚が木目を眺めすぎて脳内の認識が迷子になってしまった感覚。

 

裏地からにじむ色彩が生地をこえて表地を浮き立たせること自体開閉式だった扉のような知覚の感覚。

 

まったく同じ衣服のデザインなのに素材や絵柄だけで別の生き物に想える化粧やおめかしで別人に見間違う感覚。

 

フリーハンドで想うままに描いたものを一度バラバラにして再構築した時の妙なグルーヴ感覚。

 

色彩が意図せず途切れた時に、まったく同じものが再現できず新しくつくった濃淡が引き寄せた奇妙な偶然完全の感覚。

 

ヒスイ海岸に向かったのか呼ばれたのか、石を選んだのか石に選ばれたのか、8つの石を置いたのか置かされたのか、何か事象の都度に配置が転換される感覚。

 

8分と少し前くらいの太陽のエネルギーが、光と影を生み出す陰影礼賛の双極はモノクロームでいつも絶頂かつ瀕死な感覚。

 

継続認知している記憶からいつもの暮らしをしているけれど、必要のない記憶は根拠を持たない夢が整理をして消している感覚。

 

 

 

そんな感覚をGallery「MUNO」で感じました。

場所がゆったりと空間として開いているから生み出すことができる仕組みを持っていて、

そのムードが展示作品そのものに大きな影響を与えていることに気づきました。

 

ある程度は事前に決め込んでいても、実際に共同制作していく現場で、必ずしも出力は予定通りにはならない。

話を伺っていると要所で、

お互いが影響し合い、予想だにしなかった偶然さえも作品の風味として加味されてくことに気づかされます。

メンバーの意思疎通がとれていて連係や連鎖自体を楽しんでいる気配を感じました。

 

実際の制作現場でその都度、共同作業で作り上げていく大切さ、

信頼できる仲間に自分を委ねるという行為は製作上での感情や行動をとても豊かにしているものだとも深く感じました。

仕上がりに発生する偶然が交わって完成していくのは本当に楽しい制作だと「無能服」を眺めたり触れたりすることで、

どこか体温を帯びたように気持ちにしっかり届いて伝わってきました。



見学した日はちょうど撮影日でした。

写真は木製の大判カメラで撮影されるためエイトバイテンのシート・フィルムが使用されるため力強く、濃い仕上がりになります。

HPやDMの写真の淵は特殊効果の加工ではなく現像の際に実際にカタチがつく独特のものになります。

 

【補足説明】

エイトバイテン シート・フィルムの大きさが「8×10inch」=「250×200mm」

A4とB5の中間くらいになります。

一般家庭用の35ミリフィルムは「36×34mm」

 

 

 

【Review】

 

 

笑い声や笑顔のある場所にはいつもどこか引力がある。なぜ気になるかは愚問で単にそれ自体に魅力がある。

それはどんな労力や資金や人材を費やしても、必然としてつくり込むことができない。

 

場面ごとの完全偶然の余波やムードであったり、お互いの調和や同調のタイミングが重要だったりする場合が圧倒的に多いからだ。

一人だと適当に休んでしまう場合もあるけど、

目的地に誰かがいてくれるだけで気持ちが萎えずにきちんと到達できることもある。

他者が途方もない時間や労力に感じても、制作者たちが負荷も義務も感じなければ、その持続がひたすら続いていく。

継続される制作に向かい日常の慣習としてつくり込むことで程よいテンションが保たれていく。

そんなときには日々の暮らしを強度として底上げをしている場合がある。

 

制作している本人たちがいちばん楽しんでいることが表情や声から本当によく伝わってくる。

そのような事柄に出会い刺激や影響を受けて感化されることはごく稀である。本当に感謝しかないとつくづく想う。

 

 

 

今回の企画展示は通常の一定の期間での一期一会ではなくて、月毎に10回の作品展示があるので少なくても十期十会になる。

2020年の初夏からはじまり梅雨をくぐり抜け、真夏、秋、冬、と春先の3月7日に終了になる。

四季を通じて「無能服」が巻き込んだもの「無能服」に巻き込まれたもの全体が十月十日展に混じりあい参加したものを変容していくだろう。

「無能服」は無能ではなくて発展と拡張性ある無限で有能な服であることを身近に親しみを感じた。

臨月の産月に着地するとき、どの地点で定点観測していても、何かいつもと異なる心境の変化に気づけそうである。

 

 

【exhibition】今後の開催のご案内

「無能服 十月十日展」 8th collection「音楽」 

展示期間:2021.1.9.-1.24

目に見えないメロディやリズムをやわらかいドレープや切り返し、波の模様で表現し、月明かりの元思わず踊りだしたくなる、ワンピースに仕立てました。

 

 

「無能服 十月十日展」 9th collection「記号」

展示期間:2021.2.1.-2.21

「無」の文字を記号として捉え、アクリル画を切り抜いたワッペンを作り、オイルドコットンに縫い付け、ポンチョに仕立てました。

10 th collection  2.22.-3.7 (予定)

 

「無能服 十月十日展」

2020.6.1-2021.3.7

 

【開催日・開館時間・休館日】

ご鑑賞は予約制となっております。
Instagram「muno_fuku」DM : https://www.instagram.com/muno_fuku/

またはHP muno@muno-no-hito.com までお知らせください。

 

完全アポイント制ですので、

土日祝を中心にいくつかご希望日時の候補をいただけますと幸いです。

平日も日時によってはご対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。
ゆったりとした空間でお待ちしております。

 

 

【Gallery MUNO】information

 

【住所】

〒460-0011

愛知県名古屋市中区大須1-24-51 バウハウス大須1F

 

【お車でお越しの方】

ギャラリーのとなりに駐車スペースが2台分あります。

 

【電車でお越しの方】 

大須観音3番出口の階段からそのまま進み、最初の道路を右に曲がります。

十字路を2つ越えると右手にあります。

(徒歩2分 250Mほど 向かいに西大須公園があります)

 

【HP】

https://muno-no-hito.com/

 

【FB】

https://www.facebook.com/munospace

 

【Instagram】

https://www.instagram.com/muno_osu/

https://www.instagram.com/muno_fuku/

 

(了)

フリースタイル(テキスト、引用なし)

 

かただひかり

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堅田 残光

堅田 残光

造文作家。 起源は滋賀県堅田町。東/南スラヴとの混血。 獅子座。O型。白痴派。ムダにもち肌。 ご執筆などのご依頼はこちらまでお願いいたします! → cotenpa@gmail.com
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