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田中里奈展示 「Overlap」&Gallery BOX 訪問レポート

田中里奈さんの作品展示を観てきた感想と、合わせてギャラリーの訪問報告です。

 

展示が行われている「Gallery BOX」は「テラッセ納屋橋」という商業施設の中にあり、名古屋芸術大学が運営するもののようで名芸のホームページにも告知がされています。

ネット上でGallery BOXはテラッセ納屋橋の二階にあるというところまではわかったのですが、どういう場所なのかははっきりしないまま取りあえず行ってみました。

 

テラッセ納屋橋のある建物は掘川沿いに建っていましたが、商業施設の割には入り口が判然としません。

どうやら堀川に面した西側が正面になるようで、広小路を歩いてきた自分は右往左往してしまいました。

 

二階のフードコートやらスーパーの店舗を横目に見つつギャラリーらしきものを探しましたがなかなか見つかりません。

フロアマップとお店を照らし合わせながらよく見ると、「Gallery BOX」はどうやら建物の外のようです。

 

やや薄暗い通路を歩くと、絵画が幾つも掛かっているショーウィンドウが見つかりました。(ギャラリーと呼ぶにはちょっと…と思わなくもないですが)

ビル内の商業棟とマンション棟にはさまれた連絡通路という、中なのか外なのか良く分からない場所に位置していました。

(実は訪れたのは二月の夜で結構冷え込んだ日だったため風が吹き込んで猛烈に寒く、しばらく展示を観てはスーパーに駆け込むというのを繰り返していました。)

 

さて肝心の展示に関してですが、ショーウィンドウ一つ分ということで壁の面積が限られていることもあり、作品は小品が中心です。

2016年頃の作品も有りますが、昨年制作された陶板画(といってよいものか分かりませんが)が大勢を占めています。

陶の作品は滋賀のレジデンスを経て東京のアートフロントギャラリーの個展で発表されましたが、この地方ではまとまって紹介されていなかったのでうれしい限りです。

 

陶板作品も描かれる題材はこれまでのキャンバス作品と変わっていないようで、庭と木であったり建物の風景であったり室内の様子が描かれています。

しかし陶でできているため「描かれている」というよりは「形作られている」といった感じが強くなります。

 

キャンバスの絵画ですと、支持体の上に下地が作られその上に絵具が乗せられます。

支持体や下地の凹凸が表に出ることもありますが、大概は上の絵具が見せる色と形が中心になって画面が形成されているように思います。

 

一方今回の陶板作品はその色と形を陶から引き離すことが難しく感じられます。

図像である建物や木の形と凹凸はほぼ一致しており、色も上に乗っているというよりは表面を覆っているのみのようです。

これらの作品では陶は単なる「支持体」ではなく、画面そのもののように感じられます。

 

こうして形作られる画面は絵具によるよりも凹凸が大きくなっています。

とはいえ、手前にあるはずの階段や柵、木の幹がむしろ凹んでいたり、地面や背景のほうが出っ張っていたりと、

これまでの作品に観られたような奥行きの攪乱がやはりこちらも仕組まれているようです。

 

今回の展示ではそうした平面作品での試みの強化に加え、レリーフとしか言いようがない立体的な花が画面に加わった陶板作品も観られました。

 

 

さて、今回陶板作品とキャンバス作品が並んで展示されたことで、改めてキャンバスの厚みが気になってきました。

 

地面と植物が描かれたキャンバス作品は画面の大きさに比べ、木枠の厚みが目を惹きます。陶板は作品自体の厚みはさほどないため、特にその厚みが際立って感じられます。

 

ベッドサイドや机の上が描かれた作品は、キャンバスを用いていますがむしろ陶板画に近いくらい薄い支持体となっています。ただ陶板に近い厚みになっても「支持体」という印象を醸しているのも面白いところです。

このなかでも机の上を描いた作品とゴーヤの作品は、下地が押し固められたように固そうで、キャンバスの布地は全く感じられない堅牢な表面を持っていました。

たまたま同時に並べられたせいかもしれませんが、この物質性の高まりが陶板画へつながって行ったのではないかと思えてきます。

 

キャンバスに乗っかった絵具が繰り広げる複雑な虚構空間から物質性や立体感を強めた陶板画への猛進は、アーツチャレンジ2015での壁と柱への展開を思い起こさせます。

あのときの展示が「獅子吼の庭Ⅰ、Ⅱ」という大傑作の誕生につながったように、今回の挑戦からまた一段と凄みのあるキャンバス作品が生まれるのを密かに期待してしまいます。

 

 

それにしても、ショーウィンドウの中の展示はガラスにへばりついて眺めることになり、どうしてももっと近くで観たい欲望が膨らんできます。

しかし、ショーウィンドウが元々商品への欲望を掻き立てる装置だったことを考えると、それはごく当たり前な反応なのかもしれません。

 

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◎展示情報

 

【展覧会名】

田中里奈 「Overlap」

 

【会場】

gallery BOX

(テラッセ納屋橋 2F)

 

【開催日時】

2019年1月13日~5月17日(金)

 

 

 

 

 

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海牛目(かいぎゅうもく) ただの美術愛好家  社畜と家畜の狭間にtwitterを回遊  展示周りも基本狭間のみ 作り手でもなくコレクターでもなく、自他ともに認める「観るだけの人」 体力の無さには自信あり
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