L galleryにて開かれている、植松ゆりかさんの個展を観てきたので報告します。
植松さんを取り上げるのはこちらでは三回目と異常に偏ってはいるのですが、個人の好み故ご容赦願います。
と言いつつ、まずはいつもの通り先にツイートしたものを再構成して載せることにします。
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ドアをあけると早速ウサギが出迎えてくれる。
これが訪れた人を展示会場にいざなう役割をになっている。
とはいえ、それは元はウサギだったとは思うが、その姿はつぎはぎで耳としっぽにその名残を示すに過ぎない。 毛とシリコンの皮膚を持った独自の生き物だ。
会場通路部分の壁には、何体もの「元動物」の生き物がいる。もちろん本物の動物ではなくぬいぐるみだったわけだが。
毎度驚かされるのは元のぬいぐるみの種類の多さである。思わぬ動物も用いられていて、そもそもの「ぬいぐるみ」という存在の奇妙さも浮かび上がる
今回はそうしたぬいぐるみの中では定番であるウサギが大きく取り上げられている。
DMにも使われている作品は、親ウサギと子ウサギが組み合わされたもので授乳の様子を元にしているそうだが、自分には子ウサギが親ウサギの内臓を食らっているようにしかみえなかった
むさぼる子ウサギに対し、親ウサギはなすがままである。残酷な感じもするが、子ウサギからすれば遠慮していては死んでしまう。その行動はひたすら純粋で、ただただ生命の維持だけに行われる。
それは純粋さゆえに神聖さを纏うのかもしれない。傍観者とは次元の違う切実さがそこには現れている。
一方でそれを眺める人間は、自己犠牲であったり親子のつながりであったりをあれこれと考えてしまう。生命に関しては不純で余計なことかもしれないが、そうはいってもヒトは何か考えてしまうものなのだ。知恵の実さえ食べなければ、ヒトはこんなに悩むことは無かったかもしれない。
ただひたすらに生きるだけで良かったものが、何んのために生きるのかとかで悩まねばならなくなった。
しかしそうなってしまった以上は、悩まなくてもよい悩みでも抱えながら生きるしかない。
悩むことは仕方ないにしても、少しでも楽に生きるには悩み惑う自分を認め、肯定することではなかろうか?
植松ゆりかの作品はどれもつぎはぎで不完全であるが、堂々としている。そんな作品達を観ていると、悩みや惑いを抱える自分もそのままで良いような気になるのだ。
今回の展示では、他に手芸色の強いドローイングと背骨をモチーフにした作品が新たに加わっている。
針山のような支持体に刺繡されたドローイングは、手仕事と実体を伴ってはじめて表すことができる世界のようだ。
背骨は「ほふる園」では全体を包むものだった。背骨よりは肋骨が重要ということか。 このモチーフはまだこれから色々と展開しそうな予感がする。
今展は残酷で神聖、聖と俗がないまぜになりながら、それらがありのままに肯定されこちらも許された気分になる、落ち着きの空間だった。
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改めて読むとずいぶん作品とはズレたことを書いているなぁと思いますが、個人の感想ということでこちらもご容赦を。
それはともかく、ここではTWから漏れてしまった、あるいはその後思いついたことを加えておきたいと思います。
会場の通路部分の壁に提げられた布の帯は細かく立体的な模様が入っているのですが、これはゴブラン織りといって高級絨毯やカーテンなどに主に用いられるものだそうです。
展示ではその生地が細く裂かれ、ぬいぐるみを囲うような感じに掛けられています。
同じ生地がウサギの親子のぬいぐるみ作品にも用いられています。
親子の下に布が敷かれていますがこちらも裂いた端切れがまとめてあって、端部からほつれた糸が飛び出して荒れた印象を強めるようです。
ドローイングの線が刺繍で作られ、支持体が針山のようだというのは先のTWにも書きましたが、これも「家庭」の中の要素という点では共通しています。
額縁の作品もこじつければ家の壁を飾るものといえるかもしれません。
こうしてみると今回の展示は、「親」と「子」といった個々の関係性だけではなく、「家」といった場所や「家族」といった集団をめぐる愛憎入り混じった感情も漂ってくるように感じたのでした。
L galleryさんはマンションの一室を用いているのですが、建物を出て振り返るとそこに無数の「Rabbit hole」が並んでいるような錯覚に陥ったのでした。
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◎展示情報
【展覧会名】
植松ゆりか 個展 「Rabbit hole」
【会場】
L gallery
〒465-0024
名古屋市名東区本郷1-43 LiF F-1
【開催日時】
2021年8月14日(土) – 8月29日(日)
13:00 -20:00
作家在廊日:8/14,15,28,29