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ファン・デ・ナゴヤ2020 「下手があるので、上手が知れる」展 感想レポート

 

ことしもファン・デ・ナゴヤの展示を観てきましたが、その中から後藤あこさん、山中奈津紀さんの企画の報告をします。

といいつつ、これも恒例となりつつありますが今年もツイッターの投稿の転記からです。

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第1展示室のだだっぴろく高い天井を十分に生かしきった展示になっている。
後藤あこ、山中奈津紀の二人の作家による企画で、展示も部屋を二等分しテーマは共通ながらもそれぞれの世界を展開していた。

後藤あこ展示は、陶や木を用いて公園を再現している。

中央にはジャングルジムがそびえ奥には鉄棒が見えている。
地面には鳩、鉄棒には犬がつながれている
全体が灰色でモノトーンの景色になっており、それが凍り付いたような空気を醸す
そこに登場する人物像が印象的である。犬や鳩は立体的に作られているのに、人物は薄っぺらくかつ表側しかない。自立しておらず天井から操り人形のように吊り下げられて立っている姿を保っている。
造りとしては頼りなさげである。
だが、公園の中でもっとも生き生きとして見えたのが人物像であるから不思議だ。軽々とした様が自由さを呼び込むのだろうか?
姿を似せていないものの方が現実に近付いて感じられるのが、現実のとらえ難さを示しているようだ。

 

展示室の入り口と二作家の展示の境界部分は一段高い通路があるのだが、ほんのわずかな高さの違いながら、上から見たときと下に降りて立像の間を歩いた時では、全く印象が変わってくる。
この空気の変化も重要な要素に思われる。

 

山中奈津紀展示は、空間全体を使ったインスタレーションの様相で、日常見かける雑多なものが紐や糸、テープによって吊り下げられたりつなげられたりしている。
空き瓶やら古びた物干し、ほとんどごみのようなものが空間に舞っている。
それらを吊り下げたりしている紐や糸は蛍光色など結構目立つ色になっている。それがアクセントになって場を活気づけているのもあるが、やはりモノが下におっこっているのと宙に浮かんでいるのでは楽しさが違う。
取るに足らないものや、みすぼらしいものを、ほんのちょっとの操作で、生き生きとした主役に変身させる技はなかなかに見事だ。
また、それらのものの配置、空間の設えも絶妙という感じがする。

 

さて、展示のタイトルは下手/上手になっているのだが、実際の展示は具象/抽象であったり立体/平面であったりいくつもの概念が織り込まれ、とても単純な二項対立に収まらない
それはそもそも世界がそんな単純なものではないからでもある

ただ、だからといって何でもありの安易な相対主義に逃げ込むのではなく、単純ではないと知りつつ一歩でも(あるかどうかわからない)真実に近付こうとする意思が展示を引き締めているように思った。

 

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さて、改めて展示を思い返してみると、展示空間の構成が印象的です。部屋の入り口側の壁に沿って、一段高く通路が設けられています。展示室に入るためには必ず一旦はそこに上らなければなりません。
また、この通路は左右の後藤さん、山中さんの展示を分けるように、手前から部屋の奥へも伸びています。通路と壁によって両者の展示はそれぞれ区切られた形になります。通路から作品の置かれた床に降りると、途端にその世界に入り込んだ感覚になります。
ほんのわずかな高さの違いなのに、上と下では随分印象が変わります。
もちろん、作品に近づくためには段から降りなければならず、印象の違いはより近くからみていることもあるでしょう。

逆に展示領域から通路に上がると、展示全体を俯瞰するような視点に変わります。
そして一方の展示だけではなく、同時に二つの展示を見渡すこともできます。
(床からではどうしても片方の展示に入ってしまい、他方の展示に意識が向かないような気がします。)

 

後藤さん、山中さんがそれぞれ異なる基準の切り口から作り上げた世界が、段の上からは並んでみることができます。
その外観は全く異なるものですが、両者は単に切り口(基準)が違うだけで、元々同じ「世界」を表したものです。

この俯瞰した景色によって、世界は切り口の数だけ見え方が存在することが実感されます。
おそらくその基準が多ければ多いほど、世界をよりよく知ることができるように思います。

 

また俯瞰できる高い位置からだけではなく、同時に一つの視点で下に降り深く掘り下げることの重要性も、この展示は示しているように感じられます。

 

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◎展示情報

【展覧会名】
ファン・デ・ナゴヤ美術展2020 「下手があるので、上手が知れる」

【会場】
名古屋市民ギャラリー矢田 第1展示室

【開催日時】
2020.1.9(木)~26(日) 9:30~19:00 (日曜 17時まで) 月曜休館

 

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海牛目

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海牛目(かいぎゅうもく) ただの美術愛好家  社畜と家畜の狭間にtwitterを回遊  展示周りも基本狭間のみ 作り手でもなくコレクターでもなく、自他ともに認める「観るだけの人」 体力の無さには自信あり
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