spazio ritaで催されている「ケルベロス・セオリー」に行ってきました。
とは書いたものの、展示はYOUYOUさん、山もといとみさん、Moche Le Cendrillon(押谷藍花)さんの三人によるものなのですが、「ケルベロス・セオリー」が展覧会名なのか三人のユニット名なのかははっきりしませんでした。
spazio ritaのかなり分かりにくい入口の引き戸を開けて中に入ると、受付で紙が配布されています。
そこには入場前チェック項目が羅列されていますが、それが「セーファースペース」での注意事項とのことです。
その紙の裏面にはマニフェストがでかでかと記され、強い印象を与えます。
展示室に移動するとYOUYOUさんの、アートラボあいちで開かれた「メガネかえてみる?」でも中心に置かれていた、成人漫画の編み物作品が壁にかかっています。(実際には、取り上げられている漫画は子供を描いた絵本のようなキャンバス作品と関係しておりアートラボの展示とはまた違うのですが…)
今回の催しのYOUYOUさんと山もといとみさんは「メガネかえてみる?」展の参加作家さんです。
ただ、山もといとみさんの展示は会場の真ん中のラグと椅子でZINEを読むというもので、アートラボあいちでの展示とは趣がかなり異なります。
ラグにおかれているZINEはフェミニズムに関するものが多いようです。
そもそもがこの「ケルベロス・セオリー」が、「フェミニズム」にまつわるものであることは入口のマニフェストで明らかにされています。
押谷藍花さんは昨年矢田で開かれたmotion#5の参加作家さんですが、今回は全て映像作品でド派手なメイクでいくつかのコンプレックスにまつわる作品を見せていました。
全体の感想を言えば主題が「フェミニズム」にまつわるものだけに、男性である自分は戸惑いと居心地の悪さを感じてしまいました。
ただ、マニフェストであったり、今回の催しに合わせて作られたZINE(残念ながら自分が訪れた時にはまだ見本誌だけでしたが)、あるいは作品のキャプションなどの言葉から、既存の「フェミニズム」あるいはその社会への受け入れられ方に対する疑念が会場に充満しているように感じられました。
LGBTやジェンダーやフェミニズムが社会に浸透してゆく中で、どうしてもそこからこぼれ落ちる人がいる。
あるいはそうした活動の中でまた抑圧される人がいる。
今回の催しは徹底的に被害あるいは抑圧の当事者による当事者に向けた発信のようです。
これが「アート」の「展覧会」の態をなしているのは、当事者がたまたまアートの世界にいるからに過ぎないのかもしれません。
これがアートなのかというのは自分も自信がなくこちらに書くのも最初は躊躇しました。
ただ、大半の人が展示に拒絶されていると感じたとしても、これによって救われる人は必ずいると思います。
そして多分、その人は初めて居場所を得たと感じるのではないかと想像します。
多数派に属する自分にどこまで理解できたか不安ではありますが、見過ごしてはならない大事なことが示唆されている催しとしてここに記しておきます。
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◎展示情報
【展示名】
「ケルベロス・セオリー」
【会場】
spazio rita(ワンドリンク制)
〒460-0008
名古屋市中区栄5丁目26ー39 GS栄ビル B-1
【開催日時】
2021年12月8日(水) – 12月22日(水)
13:00 – 20:00