栗本ゆり子さんが、ライフワークの様に展開してきた瀬戸のSAMPLE SHOWROOMが10年目の最後をむかえた。
この場所に来るのは3回目ぐらい。変わらず存在してくれていたので、10年間で行った回数は少ない。今回は陶器のサンプルと、そのサンプルをモデルとした浅田泰子さんとのコラボレーション。
浅田さんは物に関心があり描いている。いつも、うちの子(もの)を描いていて、今回はよその子(もの)を描いた、と楽しさが伝わる絵が陶器と共に並ぶ。
今回は、今まで非売品であった陶器が買えるという事で、じっくりと観察して、私もお気に入りを購入した。買うときにここの持ち主のおじさんが陶器のうんちくを語ってくれる。これは昭和4年頃、いまから90年ほど前に作られていて…本当は手放したくないな〜〜と言いながら売ってくれた。(もっとうんちくは長かった)
栗本さんの作品はいつも、その中で展示する人や、この場所に来られる人に開いている。
ただ空間に作品をインストールするのではなく、丁寧に場と会話をし、最低限の手数で、既存の建物をそのままに、場所を提示する。そして栗本さんの場と空間に対する愛情をどの作品からも感じる。
満開の桜に包まれ戯れるように、空間と一体化する。
そんなイメージ。
サイトスペシフィックと言ってしまえば簡単になってしまうが、やはり、その場所に実際に来て見ないと、実感出来ない空間。
「開かれた場としてのインスタレーション。」
と私は呼んでいる。
美術館やギャラリーなどの既存の場所に限らず、自身で場所を見つけ、やりたい事を楽しんで形にしていく。そして同じ場所で10年、対話し続けてくることは、簡単ではないし、誰にでも出来ることではないだろう。作品から作家としてのスタンスを強く感じるし、続けてこられた栗本ゆり子さんを、とても尊敬しています。